音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
カルチエのコンセール 2010/01/30
QUARTIERS MUSICAUX
Violon, Alto & Violoncelle Trio CONCERT

カルチエミュジコ
ヴァイオリン、ヴィオラ&チェロ トリオコンセール

お知らせしていたデュオコンセールがトリオコンセールとなりました
曲目も変更させていただきます。ご了承ください。

ヴァイオリン 富山 ゆりえ
 Yurie TOMIYAMA violon
ヴィオラ 民谷 可奈子
 Kanako TAMITANI alto
チェロ 松谷 明日香
 Asuka MATSUYA violoncelle

2010年01月30日(土)19h00開演
 19h00 Samedi 30 janvier
大泉学園ゆめりあホール
西武池袋線大泉学園北口
 Yumeria Hall, Oizumigakuen, Sortie Nord,
 Ligne Seibu-Ikebukuro,


■無伴奏ヴァイオリンソナタ | I.ペトリッチ
□Sonte [Vl] (1976) | Ivo PETRIĆ (né en 1931)

■天秤座のもとに | I.ペトリッチ
□In Signo Librae [Vl & Va] (1986) | Ivo PETRIĆ

■無伴奏ヴィオラソナタ | P.ヒンデミット
□Sonate op25-1 [Va] (1922) | Paul HINDEMITH (1895-1963)

■ララバイ | R.クラーク
□Lullaby[Va & Vc] (1916) | Rebecca Clarke (1886-1979)

■グロテスク | R.クラーク
□Grotesque[Va & Vc] (1916) | Rebecca Clarke

■デュオ | W.ピストン
□Duo [Va & Vc] (1949) | Walter PISTON (1894-1976)

■弦楽トリオ | J.フランセ
□Trio a cordes(1934) | Jean FRANCAIX (1912-1997)

18h00-18h50 公開舞台稽古
(入退場自由、未就学児歓迎)

入場料(自由席)
一  般 3000円
学  生 2000円
(会員は各¥ 500円引き)
未就学児 100円
カルネ 10000円(4枚綴)

◆カルチエミュジコの会員を随時募集しております。
 会員募集の詳細


★チケットは、右の〈チケット購入申し込みフォーム〉から、
 お申し込みいただけます。
  お申し込み
   ↓
  振込先口座をお知らせ
   ↓
  ご入金確認
   ↓
  チケットご送付

予約・問合せ 
カルチエミュジコ
entracte@m.email.ne.jp

TEL 03.34.15.89.16.
FAX 03.34.15.89.17
〈異なるもの〉に触れるとき…
 2008年10月のクロード・レヴィ=ストロースの死の報に、この比類なき人類学者がちょうど一世紀を生きたことの象徴性を思った。私たちはみなレヴィ=ストロースの子供なのだ、たとえば『野生の思考』を通じて、進歩史観から解き放たれ、探求された野生の豊かさを、もはやなかったことにはできないという意味で。人類学の方法論を刷新し、構造主義の祖として現代思想を牽引した、その人生に通底する明晰な論理とモラルが、『闘うレヴィ=ストロース』(渡辺公三著、平凡社新書)には示されている。

 離れたものを見る冷静な眼差しと、異なるものとの親密な接触  小さな猿を肩にのせた若きレヴィ=ストロースの写真に、著者は、独自の流儀の顕れを見てとる。数々の透徹した著作をものした驚くべき速度と集中力の持続、それは大恐慌を挟む二つの世界大戦、戦後復興、植民地独立から社会主義と冷戦体制の崩壊、そして現在にいたる困難な時代と重なり合う。その思考の出発点、人類学者としての探求以前の若き時代の、学生活動家としての活動に著者は光をあてる。ベルギー労働党の友人の指南のもとマルクスを読み、18歳でフランス革命の活動家グラックス・バブーフを論じ、20代には学問のかたわら社会党の機関誌『社会主義学生』に書評や時評を寄稿、暴力革命の称揚とは一線を画した人間・芸術の擁護をラディカルに唱えていたという。そして『アデン・アラビア』の書評(1931)で、自然と人間主義の統合を称賛し、「(著者)ニザンの経験の価値は、アデンから帰還したことではなく、そこに行ったことにある」と書き、それに呼応するように数年後ブラジルへと向い、人類学者としての模索がはじまる。

 1939年に野の花を見て得た直観は、言語学者ヤコブソンの音韻論をモデルとして、自然と文化の分節を読み解く構造理論に結実する。『悲しき熱帯』(55)に描かれたブラジルでの日々に始まり、親族構造の交換様態を分析した『親族の基本構造』(49)から、南北アメリカ先住民の神話研究に基づき感覚と理性の結合を探る『神話論理』(64-71)へ、その思索は繰り返し若き日の問いかけと音韻論に立ち戻りながら、大きなループを描く。

 野生の思考とは「彼らの位置に自分を置こうとする私と、私によって私の位置に置かれた彼らとの出会いの場であり、理解しようとする努力の結果」であり、「正しい人間主義は、自分自身からはじめるのではなく、人間の前にまず生命を、生命の前には世界を優先し、自己を愛する以前にまず他の存在に敬意を払う必要がある」。このような〈異なるもの〉への謙虚で節度ある熱中のありようから生まれた、豊かで尽きせぬ思考の軌跡が今もわたしたちの前にひらかれていることを、この書は教えてくれる。

NN

★amazonで見る
闘うレヴィ=ストロース (平凡社新書)



カルチエ・デテ2010評論募集
カルチエ・デテ2010評論募集

2010年6月19日(土)横浜みなとみらいホール小ホールで行なわれる
カルチエ・デテ2010 レジス・カンポコンセールポルトレのコンサート
評論を下記の通り募集します。

□使用言語 日本語
□原稿枚数 縦書き一行25文字X88行=2200文字(5枚半)
□応募締切 2010年8月22日(日)24h00
□応募方法 上記フォーマットのwordおよびPDFデータで次のアドレス宛に提出下さい。entracte@m.email.ne.jp
□評論テーマ 上記コンサートのコンサート評
□選考発表 選考経過とともに主催者ブログに数点を発表のほか、評論1点を下記紙面に掲載予定
□掲載予定 『洪水』第7号(2011年1月1日発行予定)
□主催者  カルチエミュジコ
□割引チケット(一般2000円その他割引なし)はコンサート前日までにメール他で評論応募(氏名・連絡先電話番号・メールアドレス記入)の提出とともにお求めください。チケット不要の場合応募申込期限6月21日。
QM 2010年1月30日 トリオコンセール曲目解説
イヴォ・ペトリッチ『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ』
Ivo Petric:Sonata for violin solo
スロヴェニアのリュブヤナ生まれのイヴォ・ペトリッチは、子供の頃からピアノを学んでいたが、プロの音楽家になろうと思い始めたのはのちになってからである。はじめ、指揮者とオーボエ奏者として活躍した。その後、作曲家グループをつくって作品を発表していたが、1963年のワルシャワの秋現代音楽祭でルトスラフスキーから認められた。管弦楽作品のほか、室内楽作品でもさまざまな編成によるおおくの作品を書いている。ヴィニャフスキーコンクールで賞を獲得した『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ』は、導入部の静かで瞑想的な部分から、優美な中間部、激しく速い後半、消え去る最終部分まで小節線も休符も一切ない、一本のラインで描かれている作品。速度表記もなく、連続する8分音符、16分音符のテンポおよび、フレーズは「息継ぎ」と「短い息継ぎをするような箇所」と「フェルマータ」が記されていて、間合いの取りかたは全て演奏者の判断に任されている。強弱記号、表情の指示は細かく、ヴァイオリンの演奏技術の見せ所が多い。

イヴォ・ペトリッチ『天秤座のもとで』
Ivo Petric:IN SIGNO LIBRAE for violin and viola
I. Moderato recitando 4分の4拍子
II. Allegretto grazioso
III. Lento 4分の4拍子
III. Agitato drammatico (libero)
V. Vivo giocoso
初演したふたりの奏者の天秤座生まれの子供たちのために書かれたデュオ。ヴァイオリンのレチタティーヴォで始まる第1楽章。追いかけるようなヴィオラのレチタティーヴォにつづく、少し急くような表情のあと静かに第2楽章へとつながる。ヴィオラが8分の6拍子の優雅で軽快なダンスを始め、ヴァイオリンが加わる。中間部はヴィオラの4つの重音のピッツィカートを伴奏に2拍子の力強いダンスとなる。つづく第3楽章はヴィオラのゆったりとしたメロディーで始まったのち、ふたつパートに時々現われるトレモロが不安げな表情を与える。ヴィオラのエネルギッシュな6連符にあおられるような少し速い情熱的な部分があり、やがて次第に静まり弱音のなかで収束する。第4楽章は、4分の7拍子と4分の4拍子の変拍子のなかで続くヴィオラにつづくヴァイオリンのカデンツァ風のかけ合いがある。重々しいテーマの後、お互いのトレモロに支えられた旋律の応酬ののち6連符で集結して静かに完結する。最後の楽章はうきうきとした感じの速い4分の2拍子。エレガントにという指示のある両者のかけ合いがありヴィオラのトリルが特徴的な重い部分がある。ヴィオラの4つの重音ピッツィカートの上でヴァイオリンが烈しく歌いやがて弱音に戻っていくが、再び陽気なかけ合いになり同じリズムのエネルギッシュなコーダで重々しく終わる。第1楽章から第4楽章は切れ目なく演奏される。

ヒンデミット『無伴奏ヴィオラソナタ』作品25-1
Paul HINDEMITH : Sonate pour alto seul
第1楽章 Breit Viertel
第2楽章 Sehr frisch und straff
第3楽章 Sehr langsam
第4楽章 Rasendes Zeitmaβ. Wild. Tonschönheit ist Nebensache.
第5楽章 Langsam, mit viel Ausdruck
第1次世界大戦後は弦楽四重要団を結成してヴィオラのパートを受け持った。またS・ゴールドベルク、E・フォイアマンと弦楽三重奏団を結成しみずからの作品を演奏した。600曲をこえる作品には、オペラや交響曲をはじめとするあらゆるジャンルにわたった室内楽作品では、オーケストラのすべての楽器のためのソナタを作曲したとされ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどのための無伴奏曲を書いている。『無伴奏ヴィオラのためのソナタ』は、4曲あるヴィオラのための2曲目の作品にあたり、作曲家自身によって初演されている。5つの楽章からなる。

ウォルター・ピストン『デュオ』
Wakter PISTON : Duo for viola & cello
第1楽章 Allegro risoluto 4分の3拍子
第2楽章 Andante sereno
第3楽章 Allegro brillante
イタリアからの移住者の子孫であるW・ピストンは、ボストンでエンジニアの教育を受けるが、芸術を志すようになり、10代の頃からピアノやヴァイオリンを弾いて自活していた。その後、大学に戻り、作曲の勉強をし、奨学金を得て1920年代にパリに留学した。帰国後は大学で教鞭をとりながら作曲をつづけた。交響曲や室内楽曲のほか、音楽理論書も出版している。このデュオはヴィオラとチェロが、4度の動きを基本とした単旋律で協和/不協和を繰り返す。弱拍のアクセントやヘミオラ(3拍子の曲で2小節をまとめて3つの拍とする)のリズムが特徴的な第1楽章。第2楽章は5度、4度、2度の関係のモチーフが音程を変えながら展開される。最後の第3楽章は4度の動きが目立つモチーフのロンド形式のフーガ。開放弦の重音とアクセントを使ったフィナーレで華々しくおわる。

レベッカ・クラーク『ヴィオラとチェロのための2つの作品』
Rebecca CLARKE : Tow pieces for viola and cello
1.Lullaby
2.Grotesque
20世紀前半に英国の女性ヴィオラ奏者として内外で活躍する一方、ヴィオラを中心とした室内楽作品を書いている。旋法的趣のある民謡風で夢心地のような『ララバイ』と、民族音楽の力強さをもった眩惑的リズムをもった嘲笑的な『グロテスク』のふたつの楽曲からなる作品は、曲調は曖昧ながら、斬新な和声などの作曲家の特徴がみてとれる。

ジャン・フランセ『弦楽三重奏曲』
Jean FRANCAIX : Trio pour Violon, Alto et Violoncelle
音楽家の両親のもとに生まれたJ・フランセは、わずか6歳で作曲はじめ、生涯旺盛な作曲を続けるとともに、ピアニストとしても活躍した。22歳のときに書かれた『弦楽トリオ』は陽気でインスピレーションにとんだ印象的な若々しい曲想をもった作品で、パスキエトリオに捧げられ、たびたび演奏された。ミュートをつけた16分音符のスタッカートが続く短い第1楽章から、さらに軽やかな3拍子のスケルツォの第2楽章は、風刺的なトリオから冒頭のダカーポに戻る。第3楽章は4拍子と3拍子が交互に現われる、ゆるやかなメロディーと美しい和声の楽章。最終楽章はサーカスのピエロを表現したような、愉快なテーマと、途中のものがなしい旋律があるかと思うと、音域の高い口笛のようなヴァイオリンの旋律などがでてきて大騒ぎ。突然テンポも変わり気まぐれな部分をへて、テーマが戻ると勢いよく強音で盛り上がり最終部分はまた突然弱音でおどけたリズムで終わる。
デカルトさんとパスカルくん
 このふたりは「知のデカルトVS信のパスカル」などと、17世紀フランス哲学を代表してよく対比される。じっさい30歳年上のデカルトは、天才少年として名を馳せていたパルカルをたずねている。1647年9月のことである。パスカルにまつわる新書は数多く、またある意味研究尽くされているともいえるが(本国以外では日本人研究者がもっとも多いらしい)、ここでとりあげるのは「フランスの哲学者仲間の鼻つまみ者、それがパスカルだ」という文章で始まる、パスカル研究者でないJ.ブランの『パスカルの哲学』(竹田篤司訳、文庫クセジュ)である。

パスカルには、死の直後に姉ジルベルトが残した手記などによって、その生涯はかなり詳しく追うことができる。母親が早死にしたとはいえ、裕福な家庭に育ったパスカルは、教育熱心な父親から教育を受け、子供の頃から数学をはじめとして天分をしめし、16歳で『円錐曲線論』を書いたり、ノルマンディーの徴税官になった父親のために、計算機を考案したりする一方、その頃から、ひどい頭痛など一生病苦を抱え込んでしまう。その後もトリチェッリの大気圧の実験を追試したり、当時存在しないとされていた真空に関する新実験をしたり、高度にともなう大気圧中の水銀の高さを測る実験も提案している。圧力をしめす国際単位は「パスカル」だし、「ほかの」教科書に「パスカルの定理」や「パスカルの原理」がでてきて、面食らった方も多いだろう。

父の死、妹の修道院への帰依などによって、パスカルは社交界に出入りする時期もあったが、晩年にはモンテーニュとデカルトを読むことが思索の源となった。やがて前者の懐疑主義にも、後者の合理主義にもひとを導くことはできないと、キリスト教の旧宗派であるジャンセニスムの教えに関心を示していたことから、キリストの「福音」を求めた。イエズス会との対立のなかで、書簡形式の『プロヴァンシアル』は、そのすぐれた文体によって社会的反響をもたらした。会が運営するポール・ロワイヤル修道院の「小さな学校」のための教科書を書いて、理性にもとづいた幾何学的精神の重要性を認めるとともに、信仰へ結びつく「繊細の精神」として精神の寛さも同時に必要であるとした。

「人間は考える葦である」という有名なことばの書かれている『パンセ』は、「断想」とも訳されているとおり、『キリスト教弁証論』という著書のためのばらばらになったメモ書きであり、それをまとめる前にパスカルは亡くなってしまった。デカルトとの対比を中心に歴史の流れにそったパスカルの全体像をくまなく網羅しながらも、それらの羅列にとどまらない本書は、訳者が最後に書いているように、無数にあるパスカルに関する書籍のなかでも、パスカルファンとアンチパスカルのどちらが読んでも納得のいく内容であろう。

*現代演劇作家J-C.ブリスビルの翻訳書のタイトルを借用した。訳者の竹田篤司・石井忠厚両氏に感謝します。

MM