音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
カルチエミュジコ ヴァイオリン&ピアノ デュオコンセール(全2回)
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カルチエミュジコ
ヴァイオリン&ピアノ
デュオコンセール(全2回)

QUARTIERS MUSICAUX
VIOLON & PIANO
2 DUO CONCERTS


ヴァイオリン 印田 千裕
 Chihiro INDA violon
ピアノ 石井 佑輔 
 Yusuke ISHII piano

杉並公会堂小ホール
(JR/メトロ 荻窪駅)
Suginami Koukaido Salle Récital
JR/Metro Ogikubo
アクセス

vol.1
2016年7月1日(金)19:00 開演
19h00 vendredi 1er Juillet 2016


■ソナタ ヴァイオリンとピアノのための (1961) |丹波 明
□Sonate pour Violon et Piano |Akira TAMBA (né en 1937)

■主題と変奏 ヴァイオリンとピアノのための (1932) |O・メシアン
□Thème et variations pour Violon et Piano |Olivier MESSIAEN (1908-92)

■ソナタ ヴァイオリンとピアノのための (1932) |A・ジョリヴェ
□Sonate pour Violon et Piano |André JOLIVET (1905-74)

■ソナタ ヴァイオリンとピアノのための (1947) |平尾 貴四男
□Sonate pour Violon et Piano |Kishio HIRAO (1907-53)

vol.2
2016年11月26日(土)19:00
19h00 samedi 26 novembre 2016


■トーカル ヴァイオリンとピアノのための (2010) |K・サーリアホ
□Tocar pour Violon et Piano |Kaija SAARIAHO (née en 1952)

■作品 ヴァイオリンとピアノのための (1975) |C・ヴィヴィエ
□Pièce pour Violon et Piano |Claude VIVIER (1948-1983)

■メランコリィ ヴァイオリンとピアノのための (2000) |E・タンギィ
□Mélancolie pour Violon et Piano |Eric TANGUY (né en 1968)

■そしてすべてがふたたびはじまると… (2003) |G・フィンズィ
□Et Si Tout Recommençait... pour Violon et Piano |Graciane FINZI (née en1945)

■太陽=炎 ヴァイオリンとピアノのための (2013) |T・ペク
□Soleil-Feu pour Violon et Piano |Thierry PÉCOU (né en 1965)

■夜ひそやかに ヴァイオリンとピアノのための (2011) |J・ルノ
□Secrètement à la nuit pour Violon et Piano |Jacques LENOT (né en 1945)

■12のデュオ ヴァイオリンとピアノのための (2005) |J・ルノ
□Douze Duos pour Violon et Piano |Jacques LENOT (né en 1945)

※演奏者・曲目は、変更される場合がございます。

チケット
【全自由席】
一般 3000円 学生2000円 小中高生1000円
  (パスリゾーム・会員 各500円引) 未就学児 100円
【セット券 (2枚/同時使用可)】
一般 5500円 学生3500円 小中高生1500円




パスリゾームは、現代音楽を楽しむためのメンバーシステムです。
カルチエのみならず、参加する現代音楽コンサートで割引料金でチケットを購入できます。
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テーマ:現代音楽 - ジャンル:音楽

プログラムノート
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(1961)|丹波 明
東京芸術大学卒業後パリ留学前後に「ドビュッシー・メシアンののちには何があるべきかを探し求める創作態度、創作意識をもって」ピアノソロとフルートとピアノのためのソナタとともに書かれたこのヴァイオリンソナタについて2011年の再演時に以下のように説明している。

−−パリ音楽院の枠の中で書き今回の演奏に当たって、数ヶ所手を入れました。第1楽章はヴァイオリンの独奏序奏で始まり、これが若々しい飛躍のある第1主題、瞑想的で透明な第2主題につながります。第2楽章は4度、5度の連続を旋律の主要音程にした緩慢な楽章です。第3楽章は半音階を多く含む主題をフーガ的な書法で処理し、中間部に瞑想的な部分をもつ3部形式で、様式的にも、時間観でも全く古典の概念をでるものではありません。


主題と変奏 ヴァイオリンとピアノのための (1932) |O・メシアン
メシアンのソロ室内楽作品のなかで、ピアノ、オンドマルトノそれにオルガンなどの鍵盤楽器がふくまれているない作品はほとんどないのは、作曲家は意識していないとしても、なにか理由があるのだろうか。

1931年より60年間以上にわたりつとめることになる聖トリニテ教会のオルガニストに任命されてすぐの最初期に書かれたこの作品の構成は、4分の4拍子のモデラートの主題と5つの変奏からなり、各変奏はつながって演奏される。ピアノの4分音符をともなって、ヴァイオリンによる付点記号のついた印象的な短い主題がモデラートで(ゆっくりと)演奏されたのち、つづいて8分音符の細かい曲想へと移行する同じモデラートの第1変奏、テンポのあがった3連音符(8分の12拍子)による第2変奏、さらに細かい拍子できらびやかに演奏される同じモデラートの第3変奏をへて、生き生きとかつ情熱的にテンポをあげて演奏される3連音符が特徴的な第4変奏から、そのまま4分音符の荘厳さをもって奏される第5変奏へと移行し、全体を締めくくる。

作曲家とヴァイオリニストのクレール・デルボスの結婚にさいして作曲され、その後、ふたりによって初演された。。


ソナタ ヴァイオリンとピアノのための (1932) |A・ジョリヴェ
ジョリヴェはすでにピアノのための『3つの時』などを発表していたが、これは『マナ』に代表される傑作群を生み出す前の時代の作品。戦後の作品のような叙情的な表現や旋法的和声語法ではなく、まだ鋭角的な表現が健在である。

音楽語法としてはヴァレーズから受け継いだ独特の音列技法によっているが、ジョリヴェは形式の上では、生涯変わることなく律儀なほど古典的なやり方を貫いており、この『ソナタ』も2つの主題の明確な提示、形式的な区切り等、古典的なソナタ形式に基づいて作曲されている。

第1楽章は、明確な2つのテーマの対峙によるソナタ形式であるが、両主題とも、第2、3楽章と密接な関係を持っている。また再現部において第2主題を先に提示するなど独特なやり方は敬愛していたベートーヴェンの手法を思わせる。

第2楽章は、ほぼ拍節感のない出だしから、だんだん煽る様にテンポは次第に速くなり、緩やかなカーブを描きながら盛り上がる構成や、ピアノの空間的な響きの模索、呪術的な表現等はすでに後の作品を彷彿とさせる。

第3楽章は、一種のロンド形式。大きな音程による強烈なまでのヴァイオリンの感情表現とスタッカートによる打楽器的な主題がコントラストを作る。主題が拡大され曲を締めくくる様は圧巻である。


ソナタ ヴァイオリンとピアノのための (1947) |平尾 貴四男
46歳で世を去った平尾貴四男の作品は決して多くないが、一つ一つが磨きぬかれた書法に支えられ、駄作はないと言ってよい。それらの中でもこの『ソナタ』は、1952年のガロワ・モンブランとジュヌヴィエーヴ・ジョワによるヴァイオリン・ソナタの公募に選ばれ、戦後日本人作品として初めて海外で出版されたように、平尾の晩年の傑作といえる。

第1楽章はモデラートの序奏に続き、律動的な第1主題といささか叙情的な第2主題を含む提示部、2つの主題が拮抗するよりむしろ融合することで音楽的盛り上がりを見せる展開部、ほぼ定石通りの再現と拡大されたコーダ等、古典的なソナタ形式を踏襲しているが、序奏のモチーフが後の楽想と見事に融合し展開する様子や、ジョリヴェのソナタのような明確な区切りではなく、あくまで音楽的な流れを損なわずにフォルムを堅持するなど、手堅い書法は平尾作品の特長といえよう。

第2楽章は、子守唄を想起させる楽想、中間部のスケルツォでは全音音階と5音音階を織り交ぜて使うなどの工夫が見られる。第3楽章は律動的な拍節感で貫かれたロンド形式。ピアノの打楽器的な使用や、ヴァイオリンの素朴ながら凛とした旋律は多分に日本の民謡や和楽器の音色を思わせる。淀みない流れの中にふと序奏のモチーフが浮かび上がるなど、あくまで形式的にはフランクやフォーレのような伝統に根ざしたフレンチスクールのやり方を受け継いでいる。
アルチストの自己紹介にかえて DUO vol.1
カルチエミュジコ ヴァイオリン&ピアノデュオコンセールvol.1
アルチストの自己紹介にかえて

印田 千裕( ヴァイオリン)
カルチエミュジコの演奏会に出演するようになって数年、今回は比較的古い年代のプログラムです。ソナタ3曲を含むリサイタル並みのボリュームでしたが、フランスと日本、時代の流れを体感する良い機会になりました。その後の年代へ進むシリーズ第2回のプログラムも楽しみです。イギリスに留学していた私としては今、EU離脱のニュースが目下一番の関心です。

石井 佑輔( ピアノ)
先日、ルイ・マルの名作「ブラック・ムーン」を初めて見たのですが、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の愛の二重唱が使われる場面が強烈すぎてしばらくワーグナーブームでした。音楽ってこういうものなんじゃないかと思う。
ヴァイオリン&ピアノ 2つのデュオコンセールをめぐって
デュオはユニットを組む場合の最小単位で、音楽では、さまざまな楽器の組み合わせがある。弦楽器あるいは管楽器のみによるデュオではせいぜいそれぞれの2声部が精一杯になってしまうが、ピアノなどの鍵盤楽器がそこにはいると、かなり趣が異なってくる。平均律や和声の問題をべつとしても、声部が数段に増加する。ピアノなどでは左右両手によって、さらにはオルガンなどでは足の鍵盤もふくめて、2声部あるいは3声部で書かれていることもおおく、さらには両手の10本の指で、もっと細かい声部に分けることも可能である。

今回は、昨年の「フランス風ピアノトリオ」を引き継ぐ、ヴァイオリンとピアノのデュオで、フランスを中心としたふたつのプログラムが組まれ、前回同様「フランス風」というのはかわらない。しかし、全体をメシアンの『主題と変奏』から始めるこのふたつのプログラムの作品タイトルだけを眺めてみても、すぐにあきらかな相違に気づかされる。同じ年(第2次世界大戦にむかう1932年)に作曲されたジョリヴェの作品と、フランスで学んだふたりによって戦後に書かれた作品による第一のプログラムでは、メシアン以外はいわゆる「ヴァイオリンソナタ」である。最後に演奏される平尾喜四男のソナタは、パリ留学後に帰国してから書かれた、モデラートの序奏からはじまる急ー緩ー急のメソッドに沿った3楽章の作品である(出版はリュデュック社)。一方、最初の丹波明のソナタは、1960年にフランスに渡って「ドビュッシーに倣って」書かれた作品である。

ソナタ形式は、基本的には序奏にはじまり、第1主題・第2主題による提示部をへて、これらの主題を変形・変奏させた展開部、さらにふたたび第1主題・第2主題による再現部ののちのコーダといった要素からなり、かずおおくの作品にもちいられている。この音楽形式はイタリア・バロック時代には、小規模ながら、すでに興隆をきわめ、つづく古典派において完成の域に到達し、室内楽のみばかりでなく、交響曲あるいは協奏曲でも用いられた。さらにはロマン派においても、この形式は継承されつつ、その枠組みを超えるものが模索されることになる。主題が繰り返されるこのソナタ形式は、さまざまな楽器編成のジャンルにおいても、はじめて楽曲を聴く聴衆にとって、主題が記憶にとどまる仕掛けといえよう。

一方、時代も下った第二のプログラムには、「ソナタ」というタイトルはもはや見当たらない。いずれも演奏時間から小品といえるものであり、このことは短絡的に結びつけられないとしても、ソナタ形式から離別した作曲家たちの宿命といえるかもしれない。フィンランド出身のサーリアホのシベリウス・ヴァイオリン・コンクールのファイナリストのために書かれた小品と、若くして亡くなったカナダ人・ヴィヴィエのミュージック・カナダのコンクールのための作品にはさらに演奏時間の制限があったのであろう。ギトリスにより東京で初演されたタンギィの作品と、メランコリックなふたつの楽章からなるフィンズィの作品、さらには古代メキシコの神話に触発されたペクの作品、そして最後にユダヤ系ドイツ人女性作家ラスカー=シューラーの作品に触発されたルノの作品が、組曲とともに2曲並べられている。

こうしてみると、1960年前後に書かれた丹波明の3部作(ほかはフルートソナタとピアノソナタ)は、いみじくも作曲家自身が語っているように、時代ハズレの遅れてきたソナタといえるかもしれない。このふたつのプログラムを隔てる短い年月の中で廃れてしまったかのようなソナタ形式であるが、将来、新たな形で復活することはあるのだろうか。

テーマ:現代音楽 - ジャンル:音楽