音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
〈コロンブスを発見した〉ひとびと
 発見=今まで知られていない物事を初めて見いだすこと。1492年、コロンブスはいかにして何万年も前から人の暮らす地を「発見」できたのか、私にはわからない。その後の先住民の苦難の道、激烈な土地・文化・生命の収奪は、今では歴史に(少しは)記述され、西部劇の野蛮なインディアン像も塗り替えられた。大地と調和して生きる彼らの文化に憧れる人も少なくない。が、それを辛くも伝えてきた背景にある、今も続く困難な状況を見ないなら、それもまた文化的収奪でしかない。現在の現実の彼らはどこでどう生きているのか。鎌田遵著『ネイティブ・アメリカン  先住民社会の現在』(岩波新書1172)は、それを伝えるために書かれた一冊である。

 1492年当時の部族数は数百から千以上、ある推計によると人口700万人、1900年に25万人、減少率97%! 2000年の国勢調査では247万人(総人口の0.9%)。合衆国独立後は、政府による部族との条約締結とその不履行、先住民討伐戦争の末、1890年、彼らの土地は完全に奪われた。現在、先住民が暮らす300以上の居留地の面積は全土の3%未満。居留地には司法・立法・行政を統括する部族政府がおかれ、法的には「国内の従属国家」だが、様々な制限を受け自治権は限定的である。旧来の生活圏にある居留地は殆どなく、居留地のない部族、部族と認定されない部族もある。部族員の認定も、混血や都市居住の増加により、法と帰属意識の矛盾を孕んでいる。

 1890年以降、個人への土地割当てと同化政策が、共同体と伝統文化をさらに破壊。1934年のインディアン再組織法は、自治政府設立と部族憲法制定を促し、自治への希望をもたらした。しかし1945年のインディアン終結政策は、自立促進を名目とする援助打ち切りと部族社会の解体で、転住した都市先住民の貧困・差別など新たな問題が発生した。60年代には、文化的アイデンティティの回復と民族自決を目指す運動が生まれ、非先住民とも連帯しながら、さまざまな直接行動は現在も続いている。しかし、差別、貧困、失業、アルコール依存、病気、犯罪などの問題は依然として大きい。最近では、居留地におけるウランなどの資源開発、部族政府によるカジノ経営など、経済力強化と環境破壊の両刃の側面も浮上している。

 他民族社会がサラダボウルなら、先住民は〈かき混ぜるたびに傷つきすり減るボウルの底面〉と著者は言い、「コロンブスを発見してやった」と皮肉で寛大なジョークを飛ばす、その地のホスト=先住民に、ゲスト=アメリカ人が敬意をはらい、できれば少しは家賃を支払ってほしい、という彼らの控え目な願いを最後に伝える。受け取ったものを次に引き渡して、行為は文化となる。それは伝言ゲームのように造作なく、そして難しい。
NN

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