音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
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いちまんきろー05
PenicheOpera.jpg


横浜に来てもらうことになっていたペニッシュオペラのディレクト
リスへの取材のためにお正月休みを利用して急遽、パリまでやって
きたときには、セーヌを渡った右岸のことはほとんど知らなかった。

現在のようにインターネットもなかったときに、どうにかこうにか、
残りわずかな公演予定日を確かめてから、(お正月といっても、ク
リスマス休暇のあるパリでは元旦が休日なだけだけれど、そんなこ
ともあまり知らなかった)航空チケットを予約した。

朝、東京を発って、夕方はやく滞在先のアパルトマンの引き継ぎを
すませてから、同じ日のうちに、サン=マルタン運河に沿って並行
に走るバスに乗って、何とかあたりをつけていた停泊先まで駆けつ
けた。メトロからも遠くないことに気がついたのはあとからだ。

連絡をしていたため、いろいろな資料を手渡されながら、かといっ
て、それらに目を通すまもなく、二艘のペニッシュを案内されてい
るうちに、しばらくすると、お客が集まりはじめ、まったく知らな
い作品の公演の予習どころではなかった。

その夜は、ふたつの作品がプログラミングされていて、狭いペニッ
シュの舞台を転換する代わりに、後半の作品を観るために、何と休
憩時間中に観客がべつのペニッシュのほうに移動するのだ。

コートも着ないで外に出ると、凍えるほどでもなかったパリの冬の
夜は、舞台の熱気をさますのにちょうどよかった。べつのペニッシ
ュに移った観客たちが、ヴァン・ショ(ホットワイン)を飲んでい
たことをよく覚えている。ちょうどよかったのは、わたしだけだっ
たのかもしれない。

翌日も、写真を撮るためにはやめに訪れて、日曜日の遅いマチネの
最終公演をもういちど聴いた。こうしてみると、この作品は、べつ
の機会にパリででも、あるいはべつの場所ででも公演されることも
あったのかもしれないけれど、もう、けっして観たり、聴いたりす
ることはできないのだろう。たとえば、映画などと比較しても、そ
れは明らかなことだ。

わたしは、ときどき、ヴィデオに撮ったりしないの? と相手から
同じ答えがかえってくることがわかりきっているのに、折につけ同
じ質問を繰り返してしまう。もしかしたら、音くらいとっているの
かもしれないけれど、その存在を教えられたことはない。

それらは、わたしたち聴衆のわずかな記憶のなかに残っているだけ
だ。そのことがどういったことを意味するのか、以前よりはすこし
はわかるようになったけれど、わたしにはまだ、本当には、なかな
か理解できていないのだろう。

→→→→→ラ・ペニッシュ・オペラについてのレポートと図面入り
ポスター(A2版4折り、日本語版、1998年)を希望のかたにお送
りします。メーリングリスト登録フォームから、送付先住所とその
旨、ご記入の上、お申し込み下さい。


コメント
この記事へのコメント
ヴィデオにも撮らないことに対しての、相手の答えはどうだったのでしょうか。
聴衆の記憶に残るだけで、消えてしまう、すばらしいことではないでしょうか。
自分たちの勉強のために記録するというのなら理解できますが、何でもかんでも記録に残してしまうというのもどうでしょうか。
その段階でもう違うものになってしまっていますよね。映像マジックやら数知れないマジックをいっぱい使って。
 そこでしか味わえない、それが本来の姿ではと思いますが、いかがでしょうか。
2006/12/25(月) 09:35:01 | URL | satomi #-[ 編集]
フランスでは、劇映画ばかりではなく、ドキュメンタリィの制作も盛んです。ヴィデオといっても、「記録」や「メーキング」のことではなく、どちらかというと、このドキュメントのことです。これらのフィルムのディレクターのことをフランス語ではレアリザトゥールといって、「現実化」するひとといった意味です。もちろん、その過程で、もとの舞台作品とはまったく違った作品になってしまうのがつねですし、あえて別のヴァージョンだと思っているようです。では、かれらは何を「現実化」しようとしているのでしょうか?
2006/12/28(木) 20:20:07 | URL | カルチエ #-[ 編集]
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