音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
QM 2010年1月30日 トリオコンセール曲目解説
イヴォ・ペトリッチ『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ』
Ivo Petric:Sonata for violin solo
スロヴェニアのリュブヤナ生まれのイヴォ・ペトリッチは、子供の頃からピアノを学んでいたが、プロの音楽家になろうと思い始めたのはのちになってからである。はじめ、指揮者とオーボエ奏者として活躍した。その後、作曲家グループをつくって作品を発表していたが、1963年のワルシャワの秋現代音楽祭でルトスラフスキーから認められた。管弦楽作品のほか、室内楽作品でもさまざまな編成によるおおくの作品を書いている。ヴィニャフスキーコンクールで賞を獲得した『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ』は、導入部の静かで瞑想的な部分から、優美な中間部、激しく速い後半、消え去る最終部分まで小節線も休符も一切ない、一本のラインで描かれている作品。速度表記もなく、連続する8分音符、16分音符のテンポおよび、フレーズは「息継ぎ」と「短い息継ぎをするような箇所」と「フェルマータ」が記されていて、間合いの取りかたは全て演奏者の判断に任されている。強弱記号、表情の指示は細かく、ヴァイオリンの演奏技術の見せ所が多い。

イヴォ・ペトリッチ『天秤座のもとで』
Ivo Petric:IN SIGNO LIBRAE for violin and viola
I. Moderato recitando 4分の4拍子
II. Allegretto grazioso
III. Lento 4分の4拍子
III. Agitato drammatico (libero)
V. Vivo giocoso
初演したふたりの奏者の天秤座生まれの子供たちのために書かれたデュオ。ヴァイオリンのレチタティーヴォで始まる第1楽章。追いかけるようなヴィオラのレチタティーヴォにつづく、少し急くような表情のあと静かに第2楽章へとつながる。ヴィオラが8分の6拍子の優雅で軽快なダンスを始め、ヴァイオリンが加わる。中間部はヴィオラの4つの重音のピッツィカートを伴奏に2拍子の力強いダンスとなる。つづく第3楽章はヴィオラのゆったりとしたメロディーで始まったのち、ふたつパートに時々現われるトレモロが不安げな表情を与える。ヴィオラのエネルギッシュな6連符にあおられるような少し速い情熱的な部分があり、やがて次第に静まり弱音のなかで収束する。第4楽章は、4分の7拍子と4分の4拍子の変拍子のなかで続くヴィオラにつづくヴァイオリンのカデンツァ風のかけ合いがある。重々しいテーマの後、お互いのトレモロに支えられた旋律の応酬ののち6連符で集結して静かに完結する。最後の楽章はうきうきとした感じの速い4分の2拍子。エレガントにという指示のある両者のかけ合いがありヴィオラのトリルが特徴的な重い部分がある。ヴィオラの4つの重音ピッツィカートの上でヴァイオリンが烈しく歌いやがて弱音に戻っていくが、再び陽気なかけ合いになり同じリズムのエネルギッシュなコーダで重々しく終わる。第1楽章から第4楽章は切れ目なく演奏される。

ヒンデミット『無伴奏ヴィオラソナタ』作品25-1
Paul HINDEMITH : Sonate pour alto seul
第1楽章 Breit Viertel
第2楽章 Sehr frisch und straff
第3楽章 Sehr langsam
第4楽章 Rasendes Zeitmaβ. Wild. Tonschönheit ist Nebensache.
第5楽章 Langsam, mit viel Ausdruck
第1次世界大戦後は弦楽四重要団を結成してヴィオラのパートを受け持った。またS・ゴールドベルク、E・フォイアマンと弦楽三重奏団を結成しみずからの作品を演奏した。600曲をこえる作品には、オペラや交響曲をはじめとするあらゆるジャンルにわたった室内楽作品では、オーケストラのすべての楽器のためのソナタを作曲したとされ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどのための無伴奏曲を書いている。『無伴奏ヴィオラのためのソナタ』は、4曲あるヴィオラのための2曲目の作品にあたり、作曲家自身によって初演されている。5つの楽章からなる。

ウォルター・ピストン『デュオ』
Wakter PISTON : Duo for viola & cello
第1楽章 Allegro risoluto 4分の3拍子
第2楽章 Andante sereno
第3楽章 Allegro brillante
イタリアからの移住者の子孫であるW・ピストンは、ボストンでエンジニアの教育を受けるが、芸術を志すようになり、10代の頃からピアノやヴァイオリンを弾いて自活していた。その後、大学に戻り、作曲の勉強をし、奨学金を得て1920年代にパリに留学した。帰国後は大学で教鞭をとりながら作曲をつづけた。交響曲や室内楽曲のほか、音楽理論書も出版している。このデュオはヴィオラとチェロが、4度の動きを基本とした単旋律で協和/不協和を繰り返す。弱拍のアクセントやヘミオラ(3拍子の曲で2小節をまとめて3つの拍とする)のリズムが特徴的な第1楽章。第2楽章は5度、4度、2度の関係のモチーフが音程を変えながら展開される。最後の第3楽章は4度の動きが目立つモチーフのロンド形式のフーガ。開放弦の重音とアクセントを使ったフィナーレで華々しくおわる。

レベッカ・クラーク『ヴィオラとチェロのための2つの作品』
Rebecca CLARKE : Tow pieces for viola and cello
1.Lullaby
2.Grotesque
20世紀前半に英国の女性ヴィオラ奏者として内外で活躍する一方、ヴィオラを中心とした室内楽作品を書いている。旋法的趣のある民謡風で夢心地のような『ララバイ』と、民族音楽の力強さをもった眩惑的リズムをもった嘲笑的な『グロテスク』のふたつの楽曲からなる作品は、曲調は曖昧ながら、斬新な和声などの作曲家の特徴がみてとれる。

ジャン・フランセ『弦楽三重奏曲』
Jean FRANCAIX : Trio pour Violon, Alto et Violoncelle
音楽家の両親のもとに生まれたJ・フランセは、わずか6歳で作曲はじめ、生涯旺盛な作曲を続けるとともに、ピアニストとしても活躍した。22歳のときに書かれた『弦楽トリオ』は陽気でインスピレーションにとんだ印象的な若々しい曲想をもった作品で、パスキエトリオに捧げられ、たびたび演奏された。ミュートをつけた16分音符のスタッカートが続く短い第1楽章から、さらに軽やかな3拍子のスケルツォの第2楽章は、風刺的なトリオから冒頭のダカーポに戻る。第3楽章は4拍子と3拍子が交互に現われる、ゆるやかなメロディーと美しい和声の楽章。最終楽章はサーカスのピエロを表現したような、愉快なテーマと、途中のものがなしい旋律があるかと思うと、音域の高い口笛のようなヴァイオリンの旋律などがでてきて大騒ぎ。突然テンポも変わり気まぐれな部分をへて、テーマが戻ると勢いよく強音で盛り上がり最終部分はまた突然弱音でおどけたリズムで終わる。
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