音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
カルチエミュジコデュオコンセールの曲目解説 〈QM36〉
タムタムweb
〈G.プストロコンスカ=ナウラティルから送られてきたスケッチ〉
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 カルチエデテ2009年の作曲家であるE・カナ=ドゥ=シズィが、現代音楽に親しむための出版社企画曲集のために書いた『ふたりのうた』は短い作品である。同じ音域の7度音程のなかで2つのヴァイオリンがおたがいにメロディを奏でる。少し速いピッツィカートとトレモロからさらにテンポが上がり、7連と5連音符で一本のラインとなった後は、グリッサンドで下降する。エディットの特徴的な3重音の激しいリズムののちテンポは緩み静かに終結する。
 第2次大戦中の米国亡命中のシカゴ行き列車車中で書かれたD・ミヨ『ソナチネ』は、教職をえたカリフォルニアのミルズカレッジの生徒のための作品である。第1楽章は不思議な和音の前奏のあと、あまり関連ない明るい主題が第1ヴァイオリンから第2ヴァイオリンに現われ、臨時記号によって次々に転調してゆく。展開部のあと、テーマが弱音で戻り、さらにピアニッシモで(第2ヴァイオリンはハーモニクスで)曲を閉じる。第2楽章は8分の6拍子のピッツィカートの伴奏をともなったゆったりとしたメロディーの舟歌。時々あらわれるさざなみを思わせるような2オクターヴはなれたユニゾンが印象的である。第3楽章は明るく快活なテーマ。スラーやリズムによる拍子のズレが楽しい。コーダではテーマが二つのヴァイオリンに重音の一拍ずつずれてあらわれ、フォルティッシモではなばなしく終わる。
 ヴァイオリン独奏でも演奏することのできる近藤譲『ニワトコの木の3つの歌』では、今回カウベルとトムトムが原作によるオブリガートとして演奏される。第1楽章はヴァイオリンが半音階的に進行し、特徴的なグリッサンドを用いる。第2楽章は3連音符を基調として、時折挿入されるカウベルにより拍子から逸脱した「ずれ」を生む。第3楽章は打楽器が印象的なリズムを刻むなかで作品の核となる主題をヴァイオリンが歌い上げる。一貫した時間の流れが特徴的である。1997年草津国際音楽フェスティバルで初演。
 ポーランド・ブロツワフウ生まのプストロコンスカ=ナウラティルは、自国での研鑽の後、フランスにおいてブーレーズ、メシアン、クセナキスのセミナーを受講している。異色な楽器を組み合わせる実験的試みを展開している『スチュディオ』では、ヴァイオリンには細やかなヴィヴラート奏法、銅鑼には多種多様なスティックでの奏法を指定されている。銅鑼の音響空間のなかでヴァイオリンの弦の重なり合いが、摩訶不思議な彩色を生み出していく。
 マリンバと5つのウッドブロックのための福士則夫『樹霊』は、16分音符の減2度、短7度の重なり合う部分、重音を伴う5連符の部分、オスティナートに重なり合う6連符の部分、音響デザインのなされた32分音符の4場面からなる。軽妙洒脱なイントロダクションは、竹林 に小石を投げるかのごとく、軽やかで遊び心に富んでいる。メシアンのリズム語法を想起させる5連符リズム部分は、作曲者は構造上ユニットとしての偶然に過ぎないと述べている。1995年菅原淳ソロリサイタル委嘱作品として作曲。
 マリンバのための一柳慧『源流』の2部構成の第1部では2本撥で奏され、序奏を経て水流を思わせるような現代的パッセージが奏でられる。突如「凪」の時間が訪れ、静寂を彩る。4本撥のアタッカで奏される第2部は、アフリカのカリンバ奏者カクラバ・ロビに触発された原始的な律動をはらんだテーマが高らかに奏でられる。ときおり挟み込まれる16分音符の華やかなパッセージ、やがて第1部を思わせる静寂ののち、すべてを巻き込む疾風怒濤の大団円へと向かいそのままの勢いで終結を迎える。現代と原始的躍動の融合された作品である。
 「明晰さは,あなたが愛しているもののエッセンスがあなたであることを教えてくれる」というA.ミンデルの著作に触発された書かれた倉内直子『エウカリプトゥス・グロブルス』は、「ひとつの場から同時に生起しているふたつの側面」を表現し、傷を回復させ、空気を清浄にするユーカリのイメージが作品の「側面」にふさわしいものであるというねがいがこめられている。タイトルは学名からとられている作品は短い四つの小曲からなる。2声部がほぼ同じリズムで動いたのちハーモニクスで合流する第1曲。8分音符単位の拍子の強音の重音で始まり、最後にはテンポがゆっくりになりハーモニクスでディミニュエンドして消えてゆく第2曲。弱音の両声部とも非常に高音域の、加速する32分音符のかけ合いで始まる第3曲はハーモニクスの中間部に続き6連音符と上行グリッサンドの応答後、高いミの音でひとつになる。第4曲は非常に複雑なリズムと和音の二声のカノンである。5連、6連、7連音符の絡み合いの連続となる。
 アンサンブル・ヴァン・ドリアンを結成。作曲・企画・指揮を担当した北爪道夫『ツインズ』のタイトルは「ふたご」の意味。同じ言葉を喋っても、違う。同じだけれど、様々に同じじゃない、という発音原理の異なるマリンバとヴァイオリンの二つの楽器が、ユニゾンで半音階を進行させていく。やがてときおり口をつぐむかのような休符が、おたがいに受け継がれていく。ユニゾンの中から生まれる「ズレ」の魅力を引き出した作品である。ヴァイオリン野口千代光、マリンバ吉原すみれによって初演。
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