音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
2013丹波明コンセールポルトレ プログラムノート
■C・ドビュッシー | ソナタ  フルートとハープとヴィオラのための
□Claude Debussy (1862-1918) | SONATE pour flûte, harpe et alto (1915)

ドビュッシーが晩年に書いた3曲のソナタのうち、この曲は第2番目に当たり、上記のあまり使われなくなった珍しい編成に書かれています。しかし、ドビュッシーはこの編成から来る古典的で洗練された音色を上手に生かし、音色の対比による構成を試み、完成された作品を創り出しています。音楽語法の中に「音色」(timbre)という「語」を付け加えたのは、ドビュッシーによってだといっても過言ではなく、彼に印象派という冠を被せたのも、この「音色」によるものなのです。この三重奏ソナタはそのよい例だと思います。


■ 丹波 明 | クインクエ ハープと弦楽四重奏のための
□Akira TAMBA (né en 1932) |

 QUINQUE pour harpe et quatuor à cordes (1975)
この五重奏曲は、ラジオ・フランスの委嘱で書いたもので、翌1976年3月24日、フランシス・ピエールのハープ、パリ交響楽団の弦楽四重奏団の演奏で、スタジオ105から生放送された作品です。

熱烈なワーグナー主義者であったドビュッシーが、この影響から解放され自己の音楽語法を創り出すきっかけと成ったのが、ヨーロッパ音楽とは全く無関係な、1889年のパリ万国博覧会で接した東南アジアのガムラン音楽であった様に、私は当時接していた具体音楽によってヨーロッパ伝統音楽から解放されました。この事は、12平均律の階梯音、3拍子、4拍子等の反復リズム、主題・展開・再現の構造から解放される事で、決定音楽の中に非決定性を取り入れるということです。具体的にこの曲では、ハープが創り出す雑音を音素材として、12平均律の音と同時に、又同等に使用されており、その雑音が保有するリズムが音楽のリズムと成り、人間が決めた対位法の測定リズムではありません。従ってこの曲をヨーロッパ伝統音楽の価値基準で聞くのではなく、地球が形成されていく過程を想像しながら「音」「音楽」を聞いて頂ければ幸いです。


■C・ドビュッシー | 弦楽四重奏曲 ト短調
□Claude Debussy | QUATUOR À CORDES en sol mineur (1893)

数年前からとりつかれていたワーグナー主義を少しずつ排除し、この弦楽四重奏曲でドビュッシーは完全とは云えないまでも自己の書法を探し当てており、古典への回帰を感じさせる作品です。四楽章から成り、循環形式、和声の機能を無視した「音群」に近い音の累積、凝縮された旋律等によって、初演の時は賛否の批評も分かれた作品です。これは、モーツァルト、ベートーヴェン的に書くのではなく、ワーグナーの後に何があるべきかを探し求めたドビュッシーの創作概念によるものなのです。


■ 丹波 明 | 弦楽四重奏曲 タタターII (新作委嘱作品)
□Akira TAMBA | TATHATÂ II pour Quatuor à cordes (création) (2013)

1968年に書いた「タタター I」に続くこの二番は、カルチエミュジコの委嘱で四十数年語に再度、同じ編成に取り組むことになりました。「タタター」とはサンスクリット語で、「真如」「如」と訳されている語で、あるがままの現象と云う意味で、万有に通じる真理ということです。私はこの様な理が有るかどうかは知りません。又、この様な真理をこの曲で表現したいと考えた訳でもありません。唯、ベートーヴェン、シェーンベルグ、ドビュッシー、ベルグの後には何が有るべきかを考えただけです。ヨーロッパ音楽の表現手段の他に何が有るかを考えた時、日本の能楽から多くのものを学びました。この曲は、『タタター I』に比べて、意気込むことなく「序破急」書法で書きました。音の密度(音の数)、早さ、強さ、高さの漸進的増加の組み合わせによって構成されています。

私がドビュッシーから学んだことは、敬愛し影響を受けた作曲家の後に何があるべきかを探求すべきで、その亜流であることを探し求めるべきではないという創造観念です。私はこれをドビュッシーから直接学んだのではなく、O・メシアンを通してです。この後者は、いかに前者を把握した上で亜流に成ることなく自己の書法を確立したかを身をもって教示してくれました。しかし、この創造観は、なにもドビュッシー、メシアンに限ったことではなく、多かれ少なかれヨーロッパ芸術の個に基づく創造観だということが出来ると思います。

(丹波明 記)
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