音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
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フランス風ピアノトリオのあたらしいかたち
ピアノ三重奏は、弦楽四重奏・弦楽三重奏と比較しても、古典的形式、さらにはバロック時代にまで起源をさかのぼることができる古い形式である。ソナタ形式が確立された古典時代、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ的要素ともあいまったロマン派時代には、かずかずの楽曲が書かれた。この形式は、前世紀後半には回避され、のちに新古典主義とともに復興したが、今回の作品は、それらとも一線を画するあたらしいかたちとして、フランスの作曲家たちが取り組んできたピアノトリオである。

これらの作品は、1975年から2008年の30年にわたり、ほぼ10年ごとに書かれているが、作曲家の世代に幅があるとともに、書かれたときの作曲家の年齢も大きく異なる。M=A・ダルバヴィ(47歳頃)とP・エルサン(50歳頃)が同年代で書いているのに対し、G・フィンズィ(30歳頃)とB・ジョラス(62歳頃)は大きく異なっている。また作曲された場所を特定するのは困難としても、初演はG・フィンズィとP・エルサンがフランス国内であるのに対し、M=A・ダルバヴィとB・ジョラスは米国の財団の委嘱により米国の音楽家によってNYで行われている。「パリのアメリカ人」以来、交流の深かった両都市の(ヴェクトルは異なるにせよ)関係を想起するなら「ニューヨークのフランス人」という構図になる。

このようなことから、書かれた当時のパリとNYの音楽状況という背景もさることながら、作曲された作曲家の年齢のほうに焦点をあて、それぞれの作曲家の若い頃の作品の順番からプログラムした。

モロッコ・カサブランカ生まれのG・フィンズィは10歳でパリ・コンセルヴァトワールのピアノ科に入学して以来、ずっと作曲家として音楽の道を歩んでいる。オーケストラ作品をはじめ、室内楽・ソロ作品などの多岐にわたる作品は、それぞれの楽器の独自性に留意した書法と、それらがグループとして重層化されたユニットとして、独特のダイナミスム・欲動・色彩・リズムを生み出し、調性をはみだしたハーモニーと半音階進捗によるモダン言語のなかに引力の極を生み出している。

 ▶▶試聴 グラシアーヌ・フィンズィ『トリオ』(抜粋)
 




 〈録音:2011年6月19日 演奏:中澤沙央里(vl.) 関根裕子(vc.) 新垣隆(pf.)
  カルチエデテ2011 グラシアーヌ・フィンズィ コンセールポルトレ 〉


同世代の音楽家のなかでも、オーケストラ作品をはじめとして、世界中でもっとも演奏されているM=A・ダルバヴィは、現代音楽が多様な方向に開かれることを指向し、エレクトロニクスと結びついた音色と音響現象についての探求のなかからも、空間的広がりをもったアコースティックな作品を創り上げている。これまでの音楽がつちかってきた伝統を、あらたなかたちに変化させて、聴衆に届けている。

A・ジョリヴェのクラスに学んだP・エルサンは、文学や映画に自身の音楽言語を探し求め、フランス・ミュージックの番組制作に携わるなど、流派にこだわることなく調性・旋法空間に身をおいた最初の世代である。古典的フォルムを拒否し、過去からの決別を企図した姿勢は、同じトリオの原曲をソロ・デュオなどの組合わせも取入れた斬新さにも聴きとれる。(M・マレの原曲は映画『めぐり逢う朝』で知られている)
 ▶▶試聴 フィリップ・エルサン『トリオ マラン・マレ〈聖ジュヌヴィ
  エーヴ・デュ・モンの鐘〉による変奏曲』(抜粋)
  →ナクソス ミュージックライブラリー
   
米国で音楽の勉強をはじめたB・ジョラスは、パリ音楽院でO・メシアンに学び、ドメーヌ・ミュジカルでもP・ブーレーズに協力した。1975年からアナリゼのクラスを引き継ぎ、声楽作品のみならず器楽作品においても、旋律的・表現的なレシタティヴォとしてのさまざまな声を音楽そのものとしてとらえた姿勢は、若い音楽家たちに多大な影響を与えた。

 ▶▶試聴 ベッツィ・ジョラス『トリオ』(抜粋)
 




 〈録音:2009年4月11日演奏:羽室ゆりえ(vl.) 増本麻理(vc.) 鈴木永子(pf.)
  カルチエミュジコ ヴァイオリン、チェロ&ピアノ トリオコンセール〉

テーマ:現代音楽 - ジャンル:音楽

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