音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
ヴァイオリン&ピアノ 2つのデュオコンセールをめぐって
デュオはユニットを組む場合の最小単位で、音楽では、さまざまな楽器の組み合わせがある。弦楽器あるいは管楽器のみによるデュオではせいぜいそれぞれの2声部が精一杯になってしまうが、ピアノなどの鍵盤楽器がそこにはいると、かなり趣が異なってくる。平均律や和声の問題をべつとしても、声部が数段に増加する。ピアノなどでは左右両手によって、さらにはオルガンなどでは足の鍵盤もふくめて、2声部あるいは3声部で書かれていることもおおく、さらには両手の10本の指で、もっと細かい声部に分けることも可能である。

今回は、昨年の「フランス風ピアノトリオ」を引き継ぐ、ヴァイオリンとピアノのデュオで、フランスを中心としたふたつのプログラムが組まれ、前回同様「フランス風」というのはかわらない。しかし、全体をメシアンの『主題と変奏』から始めるこのふたつのプログラムの作品タイトルだけを眺めてみても、すぐにあきらかな相違に気づかされる。同じ年(第2次世界大戦にむかう1932年)に作曲されたジョリヴェの作品と、フランスで学んだふたりによって戦後に書かれた作品による第一のプログラムでは、メシアン以外はいわゆる「ヴァイオリンソナタ」である。最後に演奏される平尾喜四男のソナタは、パリ留学後に帰国してから書かれた、モデラートの序奏からはじまる急ー緩ー急のメソッドに沿った3楽章の作品である(出版はリュデュック社)。一方、最初の丹波明のソナタは、1960年にフランスに渡って「ドビュッシーに倣って」書かれた作品である。

ソナタ形式は、基本的には序奏にはじまり、第1主題・第2主題による提示部をへて、これらの主題を変形・変奏させた展開部、さらにふたたび第1主題・第2主題による再現部ののちのコーダといった要素からなり、かずおおくの作品にもちいられている。この音楽形式はイタリア・バロック時代には、小規模ながら、すでに興隆をきわめ、つづく古典派において完成の域に到達し、室内楽のみばかりでなく、交響曲あるいは協奏曲でも用いられた。さらにはロマン派においても、この形式は継承されつつ、その枠組みを超えるものが模索されることになる。主題が繰り返されるこのソナタ形式は、さまざまな楽器編成のジャンルにおいても、はじめて楽曲を聴く聴衆にとって、主題が記憶にとどまる仕掛けといえよう。

一方、時代も下った第二のプログラムには、「ソナタ」というタイトルはもはや見当たらない。いずれも演奏時間から小品といえるものであり、このことは短絡的に結びつけられないとしても、ソナタ形式から離別した作曲家たちの宿命といえるかもしれない。フィンランド出身のサーリアホのシベリウス・ヴァイオリン・コンクールのファイナリストのために書かれた小品と、若くして亡くなったカナダ人・ヴィヴィエのミュージック・カナダのコンクールのための作品にはさらに演奏時間の制限があったのであろう。ギトリスにより東京で初演されたタンギィの作品と、メランコリックなふたつの楽章からなるフィンズィの作品、さらには古代メキシコの神話に触発されたペクの作品、そして最後にユダヤ系ドイツ人女性作家ラスカー=シューラーの作品に触発されたルノの作品が、組曲とともに2曲並べられている。

こうしてみると、1960年前後に書かれた丹波明の3部作(ほかはフルートソナタとピアノソナタ)は、いみじくも作曲家自身が語っているように、時代ハズレの遅れてきたソナタといえるかもしれない。このふたつのプログラムを隔てる短い年月の中で廃れてしまったかのようなソナタ形式であるが、将来、新たな形で復活することはあるのだろうか。

テーマ:現代音楽 - ジャンル:音楽

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