音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
プログラムノート
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(1961)|丹波 明
東京芸術大学卒業後パリ留学前後に「ドビュッシー・メシアンののちには何があるべきかを探し求める創作態度、創作意識をもって」ピアノソロとフルートとピアノのためのソナタとともに書かれたこのヴァイオリンソナタについて2011年の再演時に以下のように説明している。

−−パリ音楽院の枠の中で書き今回の演奏に当たって、数ヶ所手を入れました。第1楽章はヴァイオリンの独奏序奏で始まり、これが若々しい飛躍のある第1主題、瞑想的で透明な第2主題につながります。第2楽章は4度、5度の連続を旋律の主要音程にした緩慢な楽章です。第3楽章は半音階を多く含む主題をフーガ的な書法で処理し、中間部に瞑想的な部分をもつ3部形式で、様式的にも、時間観でも全く古典の概念をでるものではありません。


主題と変奏 ヴァイオリンとピアノのための (1932) |O・メシアン
メシアンのソロ室内楽作品のなかで、ピアノ、オンドマルトノそれにオルガンなどの鍵盤楽器がふくまれているない作品はほとんどないのは、作曲家は意識していないとしても、なにか理由があるのだろうか。

1931年より60年間以上にわたりつとめることになる聖トリニテ教会のオルガニストに任命されてすぐの最初期に書かれたこの作品の構成は、4分の4拍子のモデラートの主題と5つの変奏からなり、各変奏はつながって演奏される。ピアノの4分音符をともなって、ヴァイオリンによる付点記号のついた印象的な短い主題がモデラートで(ゆっくりと)演奏されたのち、つづいて8分音符の細かい曲想へと移行する同じモデラートの第1変奏、テンポのあがった3連音符(8分の12拍子)による第2変奏、さらに細かい拍子できらびやかに演奏される同じモデラートの第3変奏をへて、生き生きとかつ情熱的にテンポをあげて演奏される3連音符が特徴的な第4変奏から、そのまま4分音符の荘厳さをもって奏される第5変奏へと移行し、全体を締めくくる。

作曲家とヴァイオリニストのクレール・デルボスの結婚にさいして作曲され、その後、ふたりによって初演された。。


ソナタ ヴァイオリンとピアノのための (1932) |A・ジョリヴェ
ジョリヴェはすでにピアノのための『3つの時』などを発表していたが、これは『マナ』に代表される傑作群を生み出す前の時代の作品。戦後の作品のような叙情的な表現や旋法的和声語法ではなく、まだ鋭角的な表現が健在である。

音楽語法としてはヴァレーズから受け継いだ独特の音列技法によっているが、ジョリヴェは形式の上では、生涯変わることなく律儀なほど古典的なやり方を貫いており、この『ソナタ』も2つの主題の明確な提示、形式的な区切り等、古典的なソナタ形式に基づいて作曲されている。

第1楽章は、明確な2つのテーマの対峙によるソナタ形式であるが、両主題とも、第2、3楽章と密接な関係を持っている。また再現部において第2主題を先に提示するなど独特なやり方は敬愛していたベートーヴェンの手法を思わせる。

第2楽章は、ほぼ拍節感のない出だしから、だんだん煽る様にテンポは次第に速くなり、緩やかなカーブを描きながら盛り上がる構成や、ピアノの空間的な響きの模索、呪術的な表現等はすでに後の作品を彷彿とさせる。

第3楽章は、一種のロンド形式。大きな音程による強烈なまでのヴァイオリンの感情表現とスタッカートによる打楽器的な主題がコントラストを作る。主題が拡大され曲を締めくくる様は圧巻である。


ソナタ ヴァイオリンとピアノのための (1947) |平尾 貴四男
46歳で世を去った平尾貴四男の作品は決して多くないが、一つ一つが磨きぬかれた書法に支えられ、駄作はないと言ってよい。それらの中でもこの『ソナタ』は、1952年のガロワ・モンブランとジュヌヴィエーヴ・ジョワによるヴァイオリン・ソナタの公募に選ばれ、戦後日本人作品として初めて海外で出版されたように、平尾の晩年の傑作といえる。

第1楽章はモデラートの序奏に続き、律動的な第1主題といささか叙情的な第2主題を含む提示部、2つの主題が拮抗するよりむしろ融合することで音楽的盛り上がりを見せる展開部、ほぼ定石通りの再現と拡大されたコーダ等、古典的なソナタ形式を踏襲しているが、序奏のモチーフが後の楽想と見事に融合し展開する様子や、ジョリヴェのソナタのような明確な区切りではなく、あくまで音楽的な流れを損なわずにフォルムを堅持するなど、手堅い書法は平尾作品の特長といえよう。

第2楽章は、子守唄を想起させる楽想、中間部のスケルツォでは全音音階と5音音階を織り交ぜて使うなどの工夫が見られる。第3楽章は律動的な拍節感で貫かれたロンド形式。ピアノの打楽器的な使用や、ヴァイオリンの素朴ながら凛とした旋律は多分に日本の民謡や和楽器の音色を思わせる。淀みない流れの中にふと序奏のモチーフが浮かび上がるなど、あくまで形式的にはフランクやフォーレのような伝統に根ざしたフレンチスクールのやり方を受け継いでいる。
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