音楽をもっと身近なものにするために、ヴァイオリンを中心にさまざまな楽器編成で、演奏機会の少ない現代・近代の作品を取り上げて、室内楽コンサートを行っています。初めて聴く音楽に耳を澄ます楽しみを味わってください。
ガウディの伝言
ガウディの伝言

バルセロナにあるサグラダファミリアには曲線はあまりない、という指摘
には驚かざるをえないが、曲面があっても、それらは直線で構成されてい
ると説明されれば納得できるかもしれない。19世紀終わりから建設が続け
られているこの大聖堂に、ふとしたきっかけからパリからバルセロナに赴
き、1978年から彫刻家  本人によるとむしろ「石の中に入って彫っ
ている」石工  として参加している外尾悦郎『ガウディの伝言』(光
文社新書264)
は、この建物とその第二代目の建築家ガウディに対するさま
ざまな先入観を取り除いてくれる。

ガウディがおもに二次元図面よりも三次元模型でこの聖堂の構想をねり、
現場の職人たちに伝えていたこと、また実験に基づいて確認して採用され
たカテナリー懸垂とよばれる双曲線によって、「天国に引きつけられてい
る」構造であること、「自然は偉大な書物である」とみなし、そこに書か
れている秩序を神からのメッセージとして読み解こうとしていたこと、聖
堂自体を「光と音」ための装置として考えていたようだということ、模型
などが残されていない部分については「図面は石のなかにある」と、これ
まで建てられてきた部分に「伝言」とでもいうべきモジュール(基本寸法)
を発見したこと、キリスト教の宗教観と一体となって、いかに「機能と構
造と象徴」が緊密に結びついた建築物であるかということなどが、著者の
日々における現場での作業に即して明らかにされ、いわばひとつの謎解き
のように引き込まれてしまう。

著者による15体のさまざまな楽器を奏でる天使像によって完成したとされ
る「生誕の門」や、はじめて担当した「受難の門」につづく階段室上部ベ
ランダにある植物の芽の彫刻、あるいはガウディ自身で完成しながらも、
スペイン市民戦争時にそこに保存されていた図面や模型とともに破壊され
て封印されていた「ロザリオの間」の二体の像の修復など、創作にまつわ
るエピソードに興味をひかれる。それはまた、このような世紀を超えて続
けられている創造といういとなみが、それに参加しているガウディをはじ
めとするさまざまなひとびとに受け継がれてきたひとつの文脈であるコン
テクストを読み解こうとするものであり、そのことがいかに大切なもので
あるかいうことに気づかされる。

そして、ガウディ自身の生涯とともに彼が生きた時代について触れながら、
バルセロナを中心地とするカタルーニャ地方の歴史と、それを育んできた
ひとびとの一風かわった気質についても詳しく述べられ、サグラダファミ
リアを生み出した背景を理解することができる。

MM

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ガウディの伝言/外尾悦郎 著 (光文社新書264)




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